「あ、そう言えば…今日変な夢見ちゃったよ。寝覚め悪ぅ…」


彼女は苦笑していた。
良い夢ではなかったのだろう。


「何?どんな夢?」

「アキラじゃない別の男に襲われる夢~。まぁ夢だから、やめろって言ったらやめてくれたけど…」

「えっ!!?」

「最近アキラ私の事かまってくれないから、浮気願望が夢に出たのかなぁ?」


クスクスと笑い、アユミはアキラの頬をつついた。
顔面蒼白となったアキラは口を空気を求める魚の様にパクパクと動かしている。


「ア、アユミっ!ごめっゴメン!ごめんなさい!ちゃんと話聞くから!浮気はやめて!!」

「あっはっはっ!しないよ浮気なんて~。私にはアキラだけだから~。」


にこにこと機嫌良く笑うアユミを見て、ほっと一息。

やっとの思いで自分のものにした彼女を、そう易々とは渡せない。
何せアキラにとっては、生涯決めた相手とだけ…と決めていた貞操を、アユミに捧げた程の溺愛ぶり。
これから先、彼はアユミ以外には見向きもしないであろう。
その溺愛の度合いとして表すのならば、[病的]が妥当だろう。


と、先程までにこにこと笑っていたアユミの表情が一転。
どこか寂しげに遠くを見つめた。



「まぁ…このアユミさんが許せない程の事をしたとしたら…わからないけど…ね?」



冗談にしてはあまりにも感情の入った言い様だった。
< 4 / 6 >

この作品をシェア

pagetop