リスケ
すと、私に付き合ってまともに酒を飲む相手はヤクザばかり。どうしようもない奴らばかり。私のように今でも長い長い坂道をゴロゴロゴロ転がり続けている連中ばかり。同類項のお仲間たち。けど、あの頃の私は、若かった。何も怖くなかった。夢もあった。毎日が楽しかったの。娘が半分羨ましいんだよね本当は。怖いもの知らずの若さが。
でも、いつかは誰でも気付く。長い人生において、夢見る楽しい時期なんてほんの一瞬。
ふと気付けば、現実的な世の中だけしかない、ってことが見えてくる。惚れた男に裏切られ、騙され、捨てられ、しまいには、子供まで授かっちゃうし。女は男より損をする。確実にね。女は、若い頃が花だわね。男にチヤホヤされ、若さに惑わされ、勘違いしちゃう。ありえない幻想を夢見ちゃうし、追い掛けちゃう。私も追い掛けたな、幻想的な夢をね。

小娘の頃、初めて好きになった十歳も年上の彼氏と一緒に生活する淡くて乙女チックな夢。永遠にこの人と死ぬまで一緒に居れたら幸せだな、と真剣に思ってた。
若かったんだよね、何もかもが。純粋だった。でも、夢なんて簡単に崩れちゃう。泡のように消えて無くなっちゃう。一生覚めない夢なんてないわ。いつかは覚めるものなの。あるいは、誰かに揺り起こされちゃう。
高校卒業して直ぐに、親の反対を押し切って、なかば駆け落ち同然に彼と暮らし始めた。彼の部屋で、二人で過ごす夢のような日々。朝御飯を作り、彼が仕事で帰って来るのを楽しみに、晩御飯を作る日々。半年ぐらいは、私も彼も幸せな日

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