リスケ
々が続いたと思う。でも、緑の木の葉が紅く染まり始めた頃だったかな。彼の帰りが段々と遅くなっていったのは。たまに朝帰りするようになってきたの。世間で云うバブルの頃ね。彼は、今はこの世から消えてなくなってしまった大手証券会社の営業マンだったんだ。当時、顧客と組んで、一任勘定取引で数百億の株の売買を手掛けてたらしいの。恐らく一日で数億の利ザヤを稼いだのね、段々と身に付ける物が派手になってきた。ロレックスの金のネックレスに、腕時計。それに、真っ赤なフェラーリ。私にも、シャネルの数十万もするハンドバッグや、ダイヤの指輪なんかも買ってきてくれた。でも、銀座の高級クラブの女性の名刺や、怪しげなアジア系のパブのライター。そんなのがボロボロと背広のポケットから出て来始めた。会話も少なくなり、外泊まで平気でするようになってきた。生活費は、贅沢な程入れてくれてたけど。そんな暮らしが一年位続いたかな。寂しかったけど、耐えてたね。派手な生活で寂しさをまぎらわしてた。でも、そんな泡のような暮らしなんか長く続くはずがない。ある日、なんの前ぶれもなく突然、借金とりからの電話。毎日、朝、昼、晩と。ひどい時には、数人のヤクザ風の男が自宅まで押し掛けてくるようになった。電気、ガス、水道というライフラインを止められた。神様なんかこの世にいやしない。借金だけが積もっていく。誰も助けてくれない。この冷たい現実。私は冷たい現実に晒されたの。覚めたわ、幻想的な夢から。激しく揺り起こされたの。でもね、微かな望