きっとここで君に出会うために
「‥‥寒い」
前にいるあいつに聞こえないように小さく呟く。
頬に当たる風は思ったよりもずっと冷たくて、身を縮める。
いくら厚着をしても直接風が当たるところはやっぱり寒かった。
もっとくっつきたくて腕に力を入れて背中に頬を寄せると、
背中から温もりを感じて暖かくて少しだけほっとした。
どんどん住宅地から遠ざかっていって、周りが暗くなる。
街灯も少なくなってきた気がした。
「どこに行くの?」
そう聞いても
「いーとこ」
としか答えてくれなかった。
答えてくれないとわかったら少しの間目を閉じて温もりを感じていた。