きっとここで君に出会うために
「なんで手離さないの?」
あいつは歩き出してもまだ手を握ったままだった。
「あぁ、だって寒いんでしょ。このほうがあったかいかと思って」
いや、そうなんだけどね。
確かにあたしの右手は今あったかいよ。
でも、普通手は繋がないでしょ。
それともあたしが普通じゃないのかな。
「嫌?」
目尻を下げて聞いてくる。
だからその子犬みたいな目やめてほしい。
「嫌ではないけど」
「だったらいいじゃん。俺もあったかくていいし」
ね?と言って笑う。
よく笑うやつだな。