太陽はアイスバーをくれた
 

それからまた数日、梅雨らしい豪雨は続いた。
もちろん結衣は川には行っていない。
哲太がそこへ居ないということが解っているからだ。
 

折角好きなのだと気が付いたばかりだというのに。
結衣は途端に学校へ行くのも憂鬱になった。
 

そして今日もいつものバスに乗るのだ。
このバスに乗っていると川の前こそ通らないが、哲太の住んでいるというあの新しくできたマンションが見える。
 

あそこに哲太が居るのだと思うとなんだか嬉しくなるのだから、自分は随分と重度の恋をしているなと思う。
 

結衣はマンションを見つめていると、窓の外に一人のスーツを着ている男を見つけた。
そのスーツの男は煙草をくゆらせながら傘をさして歩いている。
 

 
「嘘、」
 

 
そのスーツの男が紛れもない哲太だったのは言うまでもない。
スーツを着ている哲太はいつもの無精髭もきちんと剃ってある。
 

いつもの、結衣の知っているいつもの哲太ではないのだ。
 

 
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