太陽はアイスバーをくれた
あたしはもう、二度とあのアイスバーを哲太さんの隣りで食べることはない。
もう二度とあの川へ行くことはない。
会うことはない。
あの無精髭にはあんなにもの男前が隠れていた。
哲太が言ったあの新しくできたマンションには、家族で住んでいたのだ。
しあわせな家族で、住んでいたのだ。
勝手に一人で暮らしているのだと思い込んでいた自分は、哲太のどこを見ていたのだ。
どうして、どこを好きになったのだ。
今、結衣の初夏の恋は終わった。
バスはそのまま振り返ることなく進む。
さようなら、だ。
2007.08.29