W・LIFE
うちには両親っていうものがいない。
あたしが中学生の時に事故でなくなった。当時、高校生だったお姉ちゃんがあたしを守ってくれたけど、それとこれは話が別だ。

「おはよう、万里ちゃん」

SNSではセンリだけど、実際のあたしの名前は万里<マリ>
お姉ちゃんは千尋<チヒロ>
嫌だけど、お姉ちゃんから一文字借りてSNSのHNをつけた。

「万里ちゃん、昨日の話だけど…」

昨日の夜、あたしはお姉ちゃんから結婚するという報告を受けた。
相手はあたしの知ってる…ううん、あたしが今も大好きな家庭教師の先生。南雲俊彦<ナグモ トシヒコ>先生。
あたしが高校受験の時にお世話になって…連絡が年賀状くらいになって2年経つのに。

「結婚するんでしょ」
「万里ちゃんが嫌ならしないわ」

また出たよ。
あたしが嫌なら。
昔からそうだ。お姉ちゃんは自分が何かする時…たとえば、友達の家に行く時とか決まってあたしにそう言う。

『万里ちゃんが嫌なら行かないわ』

あたしはそんな言い方をするお姉ちゃんがだいっきらいだ!
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