ストロング・マン
「俺が今までどんな気持ちでお前のこと見てきたと思う?」
修也と話してから、私なりにいろいろ考えていた週末の土曜。
私は弟の樹と会っていた。
弟とは年が4つ離れており、今は大学3年生だ。
私が実家を出ているため、たまに連絡を取り合ってご飯に行っている。きっと、親から顔を見てこいと言われているのだろう。
「久しぶり、姉ちゃん。」
「久しぶりー。とりあえず、どこか入ろうか。」
弟とは姉弟仲が悪くない。むしろ、いい方だ。
弟が未だに「姉ちゃん」と呼んでいるのも、仲がいい一つの要因だと思う。
家族なので会えば気を使わなくてもいいし、すごく楽なので、今日は誘いに乗った。
でなければ今はいろいろ考えていたい時だから誘いには乗らなかっただろう。
幸いなのかどうなのか、あの一件があって以降、尚からの連絡はない。
今週末は会うことにならなそうだ。
お父さんがDIYにハマっているだとか、おばあちゃんの愚痴が酷いとか、たわいもない話をしていた時、
「あー俺、彼女出来た。」
「え?それって本命ってこと?」
「それ以外どういう意味があるんだよ。」
樹は私の知る限り、中学高校とかなり適当に付き合っていたから(むしろ付き合ってない?)、わざわざ報告されるようなことは初めてだったのだ。
弟のことは正直よく分からないが、なぜだかモテるらしい。
よく女の子と歩いている所を見かけたが、毎回隣を歩いている子の顔が変わるので、初めは出くわした時には弟と彼女さんにちゃんと挨拶していたが、挨拶しても無駄だと分かってきたのでしないようになった。
そんな弟にちゃんとした彼女が出来るなんて。まさに青天の霹靂。