ストロング・マン


三直体制が終わりシステムが本番稼働を迎えたことから、今回の銀行に携わった者すべてを対象とした打ち上げが開かれた。かなり大きな規模の打ち上げのため、会社の宴会場を貸し切って行われることになった。
人数が多いため立食形式だ。今日はそのためにぺたんこの靴を履いてきた。
自分の携わっている専門チームの小さい集まりがすぐに埋もれてしまう程の人数だ。周りを見渡せば、ほとんど知らない人ばかりの人だかりの中に修也の姿があった。もちろん修也の上のちょっとオーラが怖いあのお偉い方も。

宴会開始の掛け声はもちろん銀行のお偉い方で、乾杯の合図の後、打ち上げがスタートした。
始めは違うチームも多いことから緊張して固い雰囲気だったが、ある程度お酒が進んでくると打ち解けてきて、自分とは異なる分野の話を聞くことが出来たりしてとても有意義に過ごせていた。


ふと周りを見てみると、私たちのチームの上司と話している修也が目に入った。
軽く笑みが浮かんでいて、修也もリラックス出来ているようだ。
よかった、と思って見ていると、こちらを向いた修也と目が合った。
私と目が合うなり、上司に断りを入れてこっちに歩いてきた。


「よ。お疲れ様。」


そう言ってグラスを傾けられたため、私も「お疲れ様」とグラスを運んでカチンと合わせる。


「修也こそお疲れ様。気を使ってばっかりで疲れるんじゃない?」


「まあな。今日はそれが仕事だから仕方ない。
それに誰かさんの顔見たら気が抜けたから平気。」


ニヤリと笑って私の顔を見る修也。・・・ちょっとリラックスしすぎなんじゃない?


「それはよかったですねー。

あ、来週の金曜空いてる?奈美と3人で飲み行かない?」


「んー多分大丈夫。もしかして、郁の話?」


本当にこいつは察しが良くて助かる。そう、と言うと「分かった。」と返事をしてビールをぐいっと飲んだ。

私は他のお酒をもらってこようかなと思い、お酒をもらえる方へ身体を向けるとチクチクと視線を感じることに気が付いた。



「あー、なるほど。」


< 42 / 87 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop