ストロング・マン


「うーーここでこれは反則!」


1人暮らしなのに思わず漏れる声を恥ずかしがらずに出して、ベッドの上でゴロゴロする。
待ちに待った金曜日の夜、私は買ってきた新巻を読みながらそれはもうときめいていた。
今人気のもので、クラスの学級委員長をやるくらい品行方正な主人公が、クラスの少しガラの悪い同級生の意外な素顔を見て恋をしてしまうという話だ。
私はこの主人公が恋をする男の子にすごく惚れ込んでいて、今回の巻で二人が上手くいったものだから、さっき変な声を上げてしまったという訳だ。


読み終えてからも胸の高鳴りが止まらない。きっと漫画が好きな人だけでなく、本が好きな人も、映画が好きな人もこの感覚はあると思う。


「あーこんな恋がしたかったなあ。」


思わず自分の願望が口から飛び出して、自分の高校生活を振り返る。(あの漫画の主人公たちは高校生)
あの男の子みたいに少し喧嘩っぱやくて、でも純粋で、ちょっとクールな人なんていなかったなあ。
まあ漫画に出てくるくらいのイケメンなんて現実世界にはいないよね。





・・・ん?まてよ。

クールで?でも純粋で?サッカーやっててすごくイケメンなやつがいるようないないような。



「いやいや、漫画の子とちょっと違うし。」


とかぶりをふって雑念、もとい修也を頭の中から追い出すと布団を被って眠りについた。



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