ストロング・マン
ピピピピピピ・・
んーなんだかすごくうるさい。せっかく土曜日でしかもメンテもないっていうのに。
ゆっくり寝させてよ・・・って、ん?これ電話の音?
そう気づくとすぐに飛び起きて電話に出ていた。仕事の電話かもしれないからだ。
「はい、片山です。」
「よ、おはよ。起こしたか?」
なんだか修也の声が聞こえるような気がする。まだ正常に機能していない脳みそをフル回転させ、とりあえず携帯を耳から離して画面を見ることにした。そこには「高橋 修也」の文字が表示されていた。どうやら気のせいではなく、本物らしい。
「ちょっと土曜の10時になんで電話なんかしてくるのよ・・・」
内容が仕事関連でないと察すると急に全身をけだるさが駆け巡り、ベッドに再び倒れこんだ。せっかく気持ちよく寝ていたところを邪魔されて気分が悪い。それに修也と話すのは気まずかった。
なのに修也ときたら私の気持ちを知ってか知らずか、明るい声でこう切り出す。
「今日なんか予定ある?」
「いやー特には。」
言ってからしまったと気づく。修也となんか顔を合わせづらいというのに、これでは予定があるから行けないと断ることも出来ない。これだから寝起きの電話は嫌なのだ。正常な判断が狂う。
「今日13時にお前の最寄り駅東口集合で。」
「パス。」
私は速攻で断った。まだ頭が回っていないのによくここまですぐに言えたと思う。
「パスとかはなし。来るまで待ってるからな。じゃ。」
「ちょっと!」
私の悲痛な声も届かず、すでに電話は切れていた。まったく、こんな横暴なことってある?人の予定だけ聞いて勝手に約束を取り付けるなんて。
そんなの誰が行くもんですか!
…でも、これで行かないって選択出来る人っている?