ストロング・マン
12時58分、私は最寄り駅の東口のロータリーで修也を待っていた。
ええ、結局来ちゃいましたよ。だって予定もないのに、あんなことがあったとはいえ、一応高校からの友達だし。
無下にすることが出来なかったんですよ。
はあとため息をついて空を見上げると、太陽がじりじりと照らしていた。もうすっかり夏だなあと思い、額に滲んだ汗をハンカチで拭っていると、私が立っているところよりも少し奥に一台の車が止まった。何気なしにその車を見ていると、
「郁。」
という修也の声と共に助手席のドアが空いた。まさか車でくるとは思っていなかったから、驚いた。
少し戸惑いながら車に近づき、運転席を見てみると、ステアリングを片手で握ってこちらを見ている修也がいた。車を見てみると今流行りの国産のエコカーのようだ。
「お願いしまーす。」
シートベルトをつけて声をかけると、それを確認した修也が車を発進させた。スムーズな発進だった。
車内を見てみると、お守りが吸盤でフロントガラスにくっついていた。修也のセンスにしては珍しいなと思ってみていると、それが伝わったのだろう。
「これ、親の車。」
と私の疑問に回答してくれた。確かに修也は実家暮らしだし、納得だ。
チラッと横目で見てみると、片ひじを窓枠にのせて運転する姿が目に入った。服装はシャツにデニムというラフな格好だけど、それが様になっているし。友達ひいき目で見てもかっこいいなと思った。それに高校の同級生の運転する姿なんてなかなか見る機会がなくて、今さらながら年を取ったんだなと感じる。
「今日どこか行きたいところあったの?」
ずっと疑問に思っていたことをぶつけてみると、とんでもない答えが返ってきた。
「今日は俺とデートな。」