ストロング・マン
私の横にいる人は本当に修也なのだろうか。そんなことを思うくらい、やっぱりキャラが変わっていると思う。というか、こんな修也を私は知らない。
「ちょっと、修也、どうしちゃったの?全然知らなかったんだけど、割とアグレッシブなタイプだったの?」
戸惑いを隠すことが出来なくて、思わず本音が漏れる。慌てふためく私が面白いのか、私を横目でちらっとみるとふっと笑ってまた前を向きながら口を開いた。
「そうみたいだね。自分でも知らなかった。」
それって答えになっているんだかいないんだか。呆れてため息をついていると、私が好きな曲調の歌が聞こえてきた。
「あれ、これ誰?すっごく私好みなんだけど。」
「あーなんか最近出てきた人たちみたい。なんかいいなと思ったからアルバム借りてきてみた。」
「そういえば修也と曲の好み似てるんだっけ。これいいねー」
私は音楽がすごく好きで、好きと言っても自分の好きなジャンルしか聴かないからかなり偏ってはいるんだけれど。好きな曲がかかってくると、つい曲に体を委ねてしまうというか、すぐ聴くモードに入ってしまうのだ。
1番を聴き終わりなんとなくメロディーだけでも口ずさめるようになってふんふんと鼻歌を歌っていてハッと気づいた。・・・修也に対して戸惑っていたり呆れていたりしたことをすっかり忘れて楽しんでしまっている。
なんだか現金なようで恥ずかしくて鼻歌をピタリとやめて修也の様子を横目で伺う。すると修也は私が歌うのを止めたことを不思議に思ったようでこっちを見てきた。
「ん?この曲微妙だった?」
「いや!そんなことはないんだけど…」
「なら歌えば?そういえばお前、高校の授業中に先生にばれないようにイヤホン仕込んで授業中に曲聴いてて鼻歌歌ってたことあったよな。くっ、今それ思い出すとバカすぎて笑える。」
そう言って肩を震わせて笑いだす修也。・・・確かにそんなことあったかも。今思うと自分でもバカなことやってたなあと思うけれど、そんなに笑わなくてもいいと思う。
「もーそんなに笑わないでよね!」
そう言って睨みをきかせても尚も笑い続ける修也。なんだかすっごく楽しそうにしているもんだから、つられてこっちまで笑えてきた。昔の自分なにやってんだろって。
2人で笑いあって、気づけば気まずいのとか戸惑いとか、綺麗さっぱりなくなってた。