ストロング・マン
「あたしさ、修也のこと好きかもしれない。」
私が渾身の告白をしたにも関わらず、奈美は右手に持つ箸を止めず、左手に持つグラスも握ったままで、
「よかったじゃない。んで?付き合うの?」
と、けろっとした顔でとんでもない発言をした。
開いた口が塞がらないとはまさにこのことなのかと実感した瞬間だった。今日は結構緊張してきたんだけど、全くの無意味だったらしい。
「なんでそんなあっさりなのよ。それに好きと気づいたからとはいえ、そんな簡単に付き合えないし。」
ふうとため息をついてお通しの小鉢をつんつん突っつく私を心底不思議だと言わんばかりの顔をしている奈美。
「なんで付き合えないのよ。どうせ修也に告白とかされてるんでしょ?」
「は!?なんで奈美がっ、ゲホゲホ」
私は奈美の発言に驚きすぎて息を思いっきり吸った瞬間、器官にたこわさが入ってしまい、かなり激しくむせてしまった。
奈美には修也に告白されたことは言っていなかった。ただ、私が好きになったと伝えただけなのに。どうしてバレてしまったんだろう。
「ゲホ。ふう。
てか奈美、なんで修也に告白されたと思うの?」
おしぼりで口元を抑えながらなんとか奈美に向けて質問をした。まあここまで動揺している時点でバレバレだとは思うんだけどね。
「そんなの簡単よ。」