バレンタインデーの憂鬱



それから、マフィンを焼く練習をしに、ちょくちょくあたしん家に来た優花。


そして何故か毎回、彰を試食係に引き連れてくる。


焼き終わって、彰に食べさせると、満足して帰る。


でもって、彰はあたしの作る晩ごはんを味見して帰る。


それを何度か繰り返した今日は──…



「紗也あっ!バレンタインデーになっちゃったよ!」

『そーだねぇ』




バレンタインデー当日。



教室の空気は、例えるならピンク一色で。そこら中にカップルがいた。


この教室で、あたしだけかも。今日という日を単身で過ごすの。


そう思うのも無理ないくらい、周りはカップルだらけ。



「あー!緊張するー!!」



目の前で、告白を控え、喚いてる優花でさえ(言い方、失礼だけど)数時間後にはこの空気の仲間入りなんだから。


だって昨日───…






< 12 / 34 >

この作品をシェア

pagetop