バレンタインデーの憂鬱
それから、マフィンを焼く練習をしに、ちょくちょくあたしん家に来た優花。
そして何故か毎回、彰を試食係に引き連れてくる。
焼き終わって、彰に食べさせると、満足して帰る。
でもって、彰はあたしの作る晩ごはんを味見して帰る。
それを何度か繰り返した今日は──…
「紗也あっ!バレンタインデーになっちゃったよ!」
『そーだねぇ』
バレンタインデー当日。
教室の空気は、例えるならピンク一色で。そこら中にカップルがいた。
この教室で、あたしだけかも。今日という日を単身で過ごすの。
そう思うのも無理ないくらい、周りはカップルだらけ。
「あー!緊張するー!!」
目の前で、告白を控え、喚いてる優花でさえ(言い方、失礼だけど)数時間後にはこの空気の仲間入りなんだから。
だって昨日───…