バレンタインデーの憂鬱
…──ってなもんで。
神田くんが好きなのは優花なんだから、優花が告ってフラれるワケないんだよ。むしろ、優花が神田くんに呼び出されるかもしれないんだから。
あぁ、本格的に独り身はあたしだけになっちゃう…
「あー!どうすればいいのっ!?」
大げさに頭を抱える優花。
だから、どうもしなくたってうまくいくんだってば。
言ってやりたいのは山々なんだけど。こういうことは他人が口出していいもんじゃないもんね。
「あ、そういや紗也」
『ん?』
突然話を振ってくる優花に、内心ビックリしながら相づちをうった。
「チビッコたちには何あげるの?」
『あたしもマフィンでいっかなーって』
あれ、簡単だし。
「彰くんには?」
『彰?』
…なんで彰の名前がピンポイントで出てくるの?
「まさか…チビッコと同じ扱い?」
『え?うん…?』
「マジで!?」
そ、そんなに驚くこと?
「もしかして、彰くんの気持ちに気づいてないとかいうオチ?」
『彰の、気持ち?』
え、彰ってマフィン嫌いだったっけ?……いや、優花の実験作、普通に食べてたしなー…
『ホントは普通にチョコレートがいい、とか?』
「…紗也って変なとこ、鈍感だね」