バレンタインデーの憂鬱
どーせうまくいって、2人でラブラブ帰ってくるんでしょ!邪魔者は先に帰りますーっ!
そう置き手紙を優花の机において、一人で帰ってくると、ちょうどチビッコたちが元気よく家の前で遊んでいた。
「あー!紗也ちゃんお帰りー!」
とてとて集まってきてくれるチビッコたち。この瞬間、ホントに幸せを感じるんだよね。
あたしは一度家に入って、昨日作っておいたマフィンを配った。
みんな満足してくれたみたいで、笑顔で“ありがとう”はやっぱり嬉しかった。
辺りが暗くなってきて、チビッコたちとバイバイしたのとちょうど同時に。
『あ!』
「げっ。」
帰ってきた彰に遭遇。
っていうか…
『げっ。って何よぉ!』
「出来ることなら会いたくなかったなぁ、と」
この会話、前にもしたな。
そんなのことを思っていると、彰の荷物がものすごいことに気づいた。
『すごい荷物ーっ』
「至るところに入ってた」
よくよく見てみると、全部可愛くラッピングされた小箱。
ということは……
『チョコ?』
「ん。」
そうか、彰ってモテるんだねー。でも言われてみれば、年々かっこよくなってるもんね。無駄に大人っぽいし…
「何?」
『いやー。育ったなぁ、と』
かっこよく、というのは恥ずかしいから省いといた。
「ババアか」
『うっさい!』
あたしが家に入ろうとすると、
「紗也」
止められた。
うわー…“紗也”だって。名前呼ばれたの、久しぶりだ。
『なーにっ?』
「開けて」
クイッと顎でドアを指す。
あぁ、そうか。チョコで両手がふさがって開けらんないんだ。
モテるのも辛いね。