バレンタインデーの憂鬱



『おいし?』

「ん。」



食べてくれてる彰の顔を見て訊ねると、素っ気なくだけど、答えてくれた。


こんなに短い返事なのに、チビッコにありがとうと言われるのと同じくらい、いや、それ以上かも。そのくらい、嬉しくなる。



「紗也」

『ん?』

「ありがと。」



……それは反則じゃない?


普段はありがとうなんて言わないくせに。しかもそんな優しい笑顔までプラスしちゃって!


ちょっと…ドキッてなんじゃん。



「何赤くなってんの?」

『な、なってないし!』



触れるな、そこには!



「そんな顔されると、期待しちゃうんだけど」

『ん?何を?』

「…なんでもねーよ」



今日の彰、なんか変だし。


イライラしてるみたい。カルシウム不足?


いろんなことを考えていると、


ぐー…


お腹が鳴った。



『彰ーっ。お腹へったあ』

「帰れば?」

『ほんと素っ気ないんだからあっ!で、なんかない?』

「帰る気ゼロかよ」



そう言って、冷蔵庫からオレンジジュースを取り出すと、コップに注いであたしの前に置いた。



『お、ありがと』

「そこのチョコレート、食って」

『いいの?』



これ、あんたが貰ったものでしょ?



「好きなヤツの貰えたらそれでいいっつったろ。っつかどっちみち一人じゃ食いきれねぇっつの」



好きなヤツの貰えたらって、さっき貰えなかったみたいなこと言ってなかった?


………ま、いっか。チョコ食べれるんなら♪




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