バレンタインデーの憂鬱
『じゃあ…これ!』
チョコレートの山の中から、インスピレーションで一つ選んだ。
黄色い小箱に、黄緑色のリボンがついている。
彰の代わりに、おいしくいただきます。
これを作った女の子に、心の中でお詫びを入れてから、ラッピングをといた。
『ブラウニーだ!』
一口サイズに刻まれたブラウニー。一つをつまみ上げ、口の中に運んだ。
ブラウニー特有の、ほろ苦く甘い、そしてしっとりとした食感が………
『何、これ……』
しなかった。
「おい?どうした?」
急に黙り込むあたしを見て、彰が訊ねてきた。
でもあたしに、それに答えるだけの気力は残ってなくて。
全神経が、口の中に集まっていた。
あきらかにブラウニーではない。こんなの、ただの見かけ倒しだ。
一言でこれを伝えると──…
『まっっっずーーー!!』
つまりは、こういうことなのだ。