バレンタインデーの憂鬱
あたしの苦しむ姿がツボに入ったのか、まだクスクス笑っている彰。
にしても笑いすぎ!一応あたし、被害者だからね!?あんたの身代わりだからね!?
『笑いすぎだっつの!』
さすがにイラッときたあたしは彰の胸板をドンッと押した。
……つもりだったんだけど、微動だにしない彰。
うわ。カタイ。
改めて、彰が男だって気づかされた。
両親が共働きで、あたしは一人っ子。
だから、近所に住んでいた彰は弟みたいな存在で。毎日一緒に遊んでいたくらい。
昔はあたしの方が背も高かったのに、今は思いっきり見下ろされて。
時が経つのは早いなあ、なんて思ってみる。
「何?」
あたしが彰を見たまま固まってるもんだから、彰は不審な声をあげた。
『いや、なんか……あ。ちょっといい?』