バレンタインデーの憂鬱
返事はハーイ!と、ハッキリと。
『食中毒、だってさ?あはは』
「………。」
彰が黙り込むから、あたしの乾いた笑い声だけが響いた。
ここは、ベッドの上。
さっきと違うのは……
彰の部屋の黒いベッドじゃなくて、病室の真っ白なベッド。
彰に対する女子の恨み(の、こもったチョコ)は、ハンパない破壊力で。見事にお腹をこわしたあたしは、なんと3日間も入院することになってしまったのだった。
ほんと、あのチョコは一体どうやって作ったんだろう?鑑識に回そうかな。
『あー、もう。信じらんない。チョコ食べて入院なんて、史上初なんじゃない?』
言ってみるものの、彰は無反応で。横の椅子に座って、寝ているあたしを見下ろしていた。
『彰ーっ?』
「5秒」
『え?』
ムスッとした顔で、ポツリと呟いた。
「あと5秒あればキスしてたのに」
その言葉に、あたしは思いっきり赤面した。
お腹痛いって叫んで喚いて、彰と一緒に病院に来て…
と、バタバタしてたせいですっかり忘れてたけど。
あたし、完っ璧に彰とのキス、受け入れようとしてたし。