バレンタインデーの憂鬱
『マフィン』
「マフィン!?」
材料、混ぜて焼くだけ。お手頃で簡単だよ?
『ダメなの?』
「あたしにカタカナのモノが作れるとでも!?」
『じゃあ、まふぃん』
「ひらがな表記にされても!」
『なんでもいいじゃん。ほら、小麦粉はかって!』
「あたし、本気なんだからね!」
教えてもらっている分際で、あたしの適当さに文句をつける優花。
B型ならではのマイペースさね。
『わかってる。みっちり教えてあげるから、絶対うまくいってよね!』
「さーやー!!」
優花って素直だね。今ちょっと涙目。
『泣くのは成功してから!嬉し涙しか許さないから!』
「紗也っ…!いや、姉御ぉぉ!」
そこは紗也でいいし。姉御ってなんなのよ。
「…なぁ、俺帰っていい?」
リビングでテレビを見ていたと思われる彰が、つまんなそうな顔をして、こっちにやって来た。
あ、優花にいっぱいいっぱいで存在忘れてた。
『そんなこと言わずに!優花の成功のためだと思って。ね?』
「………。」
なんだかんだで優しい彰は、再びリビングへと戻っていった。
『あんまり待たせると機嫌悪くなるから。とりあえず焼こ?』
「うんっ」