バレンタインデーの憂鬱



『彰ーっ!』

「ん…?」



ソファーに座って気持ち良さそうにウトウトしていた彰には悪いと思ったけど、大声で呼んで目覚めてもらった。



『あーん?』



寝起きの彰は素直だということを知ってるあたしは、口を開けるように促す。


案の定、目を擦りながら口を開けた。


そこに、優花の作ったマフィンを放り込む。


モゴモゴと口を動かす彰。



『どう?率直な意見を!』



手でマイクを作って、街頭インタビューのインタビュアー宜しく、訊ねてみる。



「……普通。」

『美味しいって!よかったね、優花〜』



心配そうに彰の反応を見ていた優花に抱きつく。



「今普通って言ったじゃん、彰くん」

『彰、不味かったら不味いって言うし、微妙だったら黙るもん。だから大丈夫!』

「ほんと?」

『何年幼なじみやってると思ってるの?あたしを信じなさい!』

「わーい!」



それから後片付けをした優花は、荷物をまとめてそそくさと帰っていった。



『…で、あんたは帰んないの?』





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