真夏の果実



「何で謝るんだ?」



「迷惑かけたから…。」



「俺は迷惑だなんて思ってない。双葉が泣いてたら力になってやりたいと思うから。」



「何で柊はあたしのことをそんな風に思ってくれるの?」



「放っとけねぇんだよ。今の双葉が昔の俺とダブる。」



「昔の柊…?」



「あぁ。」



「どんなんだったの?」



「高校時代の俺は周りに本音を出さないで、作り笑顔ばっかしてた。」



「うん。」



「その方が得だったしな。」



「そうだね。」



「でも自分自身は段々辛くなっていった。」



「うん。」



「そんな俺に気付いてくれたのが高3の時の担任だった。」



「担任の先生?」



「中村先生っていって、まだ大学卒業したばっかだったんだけど、俺らの目線で話してくれる先生で。」



「うん。」



「3年になってすぐに放課後呼び出されて『お前、何で無理して笑ってんだ?』って言われたんだよ。今まで誰も気付かなかったことにたった5日で気付かれた。」



「うん。」



「それで自分の気持ち全部ぶつけたら、『お前はお前のままでいい』って言ってくれて、俺すげぇ救われた。だから、あの頃の俺みたいな双葉を救いたい。」



「そうだったんだ…。」






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