真夏の果実
しばらく経ち、柊は軽く笑った。
『あー!双葉にかっこわりぃとこ見せちゃったな。』
「柊のバカ。」
『ん?何で?』
「あたしはかっこ悪いなんて思ってないのに。」
『俺泣いてたのに?』
「あたし柊の前で何回も泣いてるもん。」
『それは…まあ。』
「あたしだって、柊が悲しい時は傍に居たいの。」
『今の言葉かなり嬉しい。』
「そう?」
『これは双葉だから言うけど俺、親から愛されたことねぇんだ。』
「え?」
『母親は大の子供嫌いで、堕ろす金ないから仕方なく産んだけど、育児放棄。俺は昔から母親に嫌われないように顔色を疑ってばっかの子供だった。』
「うん…。」
『そんで、高校出てから一人暮らししてたけど一回も連絡はなくて。それが今日2年ぶりに連絡あったと思ったら金貸せだって。何か俺の存在ってなんだろうって思ってさ。』
「そうだったんだ…。」
『なぁ双葉。俺の存在ってなんなの?』
「柊…。」
自分について話し始めた柊は再び泣き出した。
そんな柊にあたしは何か言わなくちゃと思うけど、言葉が出てこない。
とにかく抱き締めることしか出来なかった。