キス
あの後教室に戻り、解っていたことなのにと千弥子は思っていた。
「……はあ」
薄い溜め息が無意識に零れ出ていた。
あの場に千弥子が居合わせた事を晶悟と夏美は気付いていたのか、晶悟が教室に来ない限り気付いているんだろうなと頭の隅で考えた。
「……」
ぼんやりと、千弥子は思っていた。
「晶悟」
「……千弥子」
放課後、千弥子は晶悟のクラスまで行く事にした。
「今日はバイトだったっけ。今大丈夫?」
「ああ、うん」
何故だか今の晶悟にいつもの余裕はない。
察した千弥子は何故だかそれがおかしくて、情けなくて笑うしかなかった。
「どうしたの、千弥子」
暫くの間黙っている千弥子に焦れて、晶悟が言った。