キス
「もう、やめよ」
「え?」
「もう、本当に別れようよ、晶悟」
別れの恐れは感じていたのだろうか、晶悟の顔は真っ白だった。
千弥子は出来る限り毅然とした態度で話す事ができるよう、奥歯を噛んだ。
嫌いになったわけではない。
これは晶悟を嫌いになることができないあたしの中でのけじめだ。
「千弥子?」
「うん」
「俺は千弥子じゃないと駄目だ」
「そんなことない」
「……千弥子以外で誰がこんな俺のこと」
「……」
本気でそう思っているの?
「居るじゃん、夏美が」
「!」
「前はカナだった。誰でも晶悟の事なら好きになってくれる」
晶悟にそんな顔をさせるつもりはないのにね、あたしにはもう我慢ができない。