キス

　

「晶悟はあたしの事を好きな訳じゃないんだよ。情があるだけ。でもそれは恋人の情じゃないよ」
　

「そんな事ない！……俺は千弥子じゃないと駄目だ、解れよ」
　

「他に好きな子がいるかいないかは別としても、あたしの事はもう彼女だと思っていないでしょ」
　

　
ここまで言うと、晶悟は泣き出しそうな表情になってしまった。
千弥子も、我慢をしていた。
　

　
「……いつからこうなったの」
　

　
耐え切れなくなった千弥子は下唇を震わせながら俯いて言う。
　

　
「千弥子、」
　

「いつからデートしてないの？いつから手を繋がなくなったの、？……いつからこうなっ……っ」
　

　
千弥子の目から涙が零れ落ちた。
晶悟は自分の目の前が真っ暗になったように感じた。