キス
「……千弥」
「ごめんね晶悟、好きなのにっ……、もう我慢できなくなった……」
泣き崩れてしゃがみ込む千弥子を、晶悟は泣くのを堪えながら見つめた。
「千弥子、俺」
しゃがみ込んだ千弥子のように、晶悟も千弥子の目の前にしゃがみ込んだ。
「千弥子」
何度も名前を呼びながら、晶悟は泣く千弥子をゆっくりと抱き締めた。
「千弥子……」
ああ、いつからこの小さな体を抱き締めていなかったのだろう。
愛しい千弥子を、抱き締める事をしなかった自分が愚かで情けない。
晶悟はようやく、自分を悔やんだ。
そんな晶悟の腕の中で、涙に肩を震わせる千弥子は拒否する事なく大人しくしていた。
「千弥、子」
晶悟の声が震えるのが千弥子にも解った。