キス
 

「千弥子、今日こそは合コンに参加してもらうからね」
 

「えっ、やだよ。行っても仕方ないし」
 

 
大学にもようやく慣れ始め、最近では千弥子の周囲の仲の良い友人が、千弥子を合コンに誘うようになった。
千弥子は晶悟と別れてからというもの、男子と交流することがなかった。
 

千弥子はいまだ、晶悟のことを忘れられてはいなかった。
 

 
「お願い、千弥子」
 

「……、ごめん、やっぱり無理だ」
 

 
千弥子がかたくなに拒むと、その友人も困ったように微笑んで「解った」と呟いた。
 

千弥子は、一歩を踏み出せないでいた。
 

 
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