キス
 

「住吉君、は、恋人とかいないの?」
 

 
早めの昼食の弁当をデスクの上で広げている晶悟に、同じように晶悟と向かい合って弁当を広げている麗奈が聞いた。
 

晶悟はチラリと麗奈を見ると、「いませんよ」と呟くように言った。
 

 
「そうなんだ、高校の時はモテたんだろうなと思って」
 

 
恥ずかしがる麗奈が、晶悟には綺麗に見えた。
 

こうして千弥子を過去にしてゆくのか。
ぼんやりと思った。
 

踏み出さなければ。
千弥子が踏み出したならば、俺も踏み出さなければ。
 

千弥子、できそうにないよ。
踏み出すということは、君を過去にするということ。できそうにもないよ。
 

 
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