キス
「橘さんって」
「うん?」
「どの辺に住んでるんですか?」
ぽつりと呟いたのは晶悟だった。
麗奈は、晶悟に名前を呼ばれる度に胸の鼓動を高鳴らせて振り向いた。
それから麗奈は、「私はね」と嬉しそうに話し始める。
晶悟もそれは嫌という程解っていた。
「実家はもっと遠いから、そこで一人暮らしなの」
「へえ、案外近いですね」
「うん。だから通勤に困らない」
「だからチャリなんだ」
麗奈がくすくすと笑っている。
いつの間にか一緒になって微笑んでいる晶悟がいた。晶悟自身も、もちろんそれに気付いていた。