キス
 

そもそも、何故千弥子は晶悟と付き合う事になったのか。
千弥子自身が頭を抱える疑問だった。
 

 
「待てよ千弥子、俺千弥子が居ないと」
 

 
そんなこと、思ってもいないくせに。
千弥子はうつろな頭でそう思った。
 

 
「何度目?あたしは何度あんたを許せばいいの」
 

 
「でもっ、千弥子がいい……、千弥子が居ないと俺みたいなどうしようもない奴は」
 

 
自分の事をよく解っているじゃない。
千弥子は思った。
 

 
「……もうしないで」
 

「!、千弥子……」
 

「どうしてカナなの……」
 

 
遂に泣きそうになったところを、必死で千弥子は我慢した。
 

やはり晶悟を手放す事はできない。
晶悟の前で泣く事もできない。
 

千弥子はこの頃よりボロボロだった。
 

 
< 5 / 26 >

この作品をシェア

pagetop