加納欄の研修旅行 シリーズ7
なんで、余計なことを言うのよぉぉぉぉ。


「飯、食うか……」

高遠先輩も、うなだれていた。

あたし達は席につき、2人だけの夕飯をご馳走になった。

「なんか、つまんない」

「仕方ねぇだろ。先手打たれたんだから」

ハァァァァァ。

ため息が深かった。

「高遠先輩、空中さんに、何話してたんですか?」

「なんでもねぇよ」

「…………」

ご馳走も半減だった。

あまり会話もなく食事をすませた。

部屋から出ると、高遠先輩が。

「スキーしに行くか」

と、言った。

「スキーですか?」

「暇だしな。この後の予定もなくなったし」


……この後の予定?


何か、1人でいいこと、企んでたな?


時刻はまだ7時だった。

確かに、寝るにも早すぎるし。

これといってすることもなかった。

「私も、スキー、一緒していいですか?」

「先に風呂行くけど?」

「いいですよ。私も入ってきます。さっき露天風呂いかなかったから。体温めてスキー行きます」

そう言って、2人で、お風呂に入りに行った。


さっき入った時に、身体洗っちゃったから、ゆっくり温泉つかろ。


あたしは、内風呂の奥にある扉を開けて、外に出た。

「さ、さむぅ~」

雪が降っていた。

岩や木に雪が積もり、露天風呂の魅力を十分に引き出していた。

「あったかぁぁい」

胸までつかり、辺りを見回した。

誰もいないこの空間を独り占めできる満足感がたまらなかった。

「欄」

突然、声をかけられた。

あたしは、慌てて肩までつかり、声が聞こえてきた方へ振り向いた。

混浴ではない。

もちろん女湯に、男性がいるわけはない。

声は、男湯から、聞こえた。

「欄、いるか?」

「た、高遠先輩?」

見えていないのはわかっていたが、肩までズボッとお湯につかった。

「女湯広いか?」

あたしは、左右を見回し答える。

「広いと思いますよ。男湯も広いですか?」

「ああ。混浴なら楽しいのにな」

「え?」

ドキンとした。


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