加納欄の研修旅行 シリーズ7
「お前スキー出来んの?」

「最近してませんでしたけど、出来ますよ」

「見えねぇな」

「え?」

「立つのがやっとなんじゃねぇの?」

「違いますって。ちゃんと立った後、少しは滑ってますから」

「オイ」

「スキーしに行きますからね!」

「…………」

「先輩?」

「…………」

返事が聞こえてこない。

「高遠先輩!?」

あたしは、男湯の壁まで歩いて行った。

「聞いてます?先輩!行きますよ!」

壁をバンッと叩いた。

「わかったよ。ちゃんと温まれよ」

「はい」


このまま何の楽しみもなく帰ってたまるか。


「けっこう広いよ~」

「寒ぅ~早く入ろうよ」

誰かが入って来た。

あたしは、再度露天風呂につかった。

「あ、誰かいるよ。すみませぇん。一緒させて下さぁい」

若い女の子の集団だった。

「ど、どうぞ」


早く出よ。


「あれ?加納さん?」

「はい?」

「先ほどは、研修ありがとうございました」


あ、研修の刑事か。


「私なんて、何にもしてないですよ」

「え~、何言ってるんですかぁ。男の刑事を投げ飛ばしてたじゃないですかぁ。見てて、胸がスーッとしたんですよ」

「そうそう。違う署の人だけど、うちの署の女子には評判悪いんですよ。なんか、女刑事は使えない。って思ってるみたいで」

「あ~」


それなら、もう1人、そんな考えの人いたよ。


「東京の男の刑事さんも、そういう考えの人、多いですか?」

「いえ、私の周りでは、そういう考えの人はいないと思いますけど……でも、そう思ってる人はいるのかも知れないですね」

「あの刑事さんは、違いますよね?」

「誰です?」

「一緒に来た、高遠刑事……」

「あぁ、高遠先輩?そうですね。高遠先輩は、違うと思いますよ。どっちかっていうと、自分が楽するために、コキ使うっていうか……」

「やっぱりぃ。いいですねぇ。あんなかっこいい人と毎日仕事できるなんてぇ」


え?


人の話し、聞いてます?


カッコイイ?


高遠先輩って、カッコイイの?


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