加納欄の研修旅行 シリーズ7
近くにいすぎて、わかんない。


っていうか、そういう風に見たことナイ。


高遠先輩は、高遠先輩だと思ってたから。


「どうかしたんですか?」

「あ、いえ」

「明日帰るんですか?」

「はい」

「じゃあ、高遠刑事とも会えないんですねぇ。ハァァ」

「そ、そうですねぇ」


な、なに?


高遠先輩、人気者?


遠くの方で、咳払いが聞こえた。


あ、高遠先輩の合図だ。


もう、出るんだ。


「じゃ、私、上がりますね。皆さん、ゆっくりしてください」

そう言って、湯船から、立ち上がろうとした。

「うわぁ、加納さん、胸大きいんですねぇ」


え?


そう言われて、あたしは、耳まで赤くなる。

「な、な、なに言ってるんですか。皆さんのほうが、大きいですよ」

あたしは、胸を慌てて隠し、そそくさと出て行こうとした。

「そんなことないですよぉ。私なんて、ないもんっ。羨ましい~。どうしたら、そんなに大きくなるんです?俗に言う、揉まれたら、って奴ですか?」


も、揉まれたら?


「彼氏も嬉しいでしょうねぇ」


彼氏も嬉しい?


「なに言ってるんですか!揉まれてもナイですし、彼氏もイナイです!」

「え~?またまたぁ。そんなに可愛いのに、彼氏いないなんてぇ。隠さなくたって。あっ!もしかして、高遠刑事……?ですか?」

「違いますっ」

「やっぱり刑事なんですか?同じ署の人?」

「だから、違いますってば。私、行きますから」

「え~。胸を大きくする方法だけでも教えて下さいよ」

「知らないですよ。そんな方法」

そう言って、あたしは、露天風呂から脱出した。


なんなの~?


女の子が集まると、ああいう話題ばかりなの~?


胸が大きくなる方法なんて、知らないよぉ。


あたしは、素早く身仕度を済ませると、高遠先輩を待つため、ロビーへ、向かった。

5分後、高遠先輩が、戻ってきた。

あたしは、高遠先輩の顔を、シゲシゲと観察した。


カッコイイのか?


まぁ、確かに、身長はある。


でも、カッコイイのか?


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