加納欄の研修旅行 シリーズ7
あたしは、大山先輩の方が、カッコよく見える。


「なんだよ」

ジロジロ見られて、高遠先輩が、言った。

「いえ、なんでも」

「そう言えば、ちゃんと、オレのアピールしといただろうな」


アピール?


「…………例えば?何の為に?」

「お前。何の為にって。さっき、オレに興味がありそうな子がいたんだろ?」

「はぁ、まぁ」

「連絡先とか、聞いたんだろ?」

「え?」

「え、じゃないよ。合図送っただろ」

「合図?いつです?」

「咳払いしただろ?」

「あぁ、してましたねぇ。あれは、もう出るぞ。でしょ?」

「…………」

「…………」


違った(-.-;)?


「なんで、風呂から上がるのに、お前に咳払いで、合図送んなきゃいけないんだよ」


まぁ、確かに……。


「すみません」

「……ハァァァ~。今回の研修、ついてねぇ」

「すみません」

部屋へ戻るしかなかった。

「15分後にロビーでいいだろ?」

「スキー連れてってくれるんですか?」

「行かなくていいのか?」

「行きますっ!5分で仕度しますっ!」

あたしは、ダッシュして身仕度を済ませるとロビーで高遠先輩が来るのをまった。

高遠先輩は、20分過ぎても来ず、あたしは、更に20分待った。


迎えに行った方がいい?


寝てる?


死んでる?


逃走?


あたしは、立ち上がり、部屋に向かおうとしたところに、高遠先輩が来た。

「おっそいですよぉ!」

なんてことは、今は、言わない。

言ったら、スキーさえなくなる。

せめてスキーくらいさせてもらいたい。

「行くか」

「はい」

まるで何事もなかったかのように話す。

外に出ると、雪は止んでいた。

スキー場は、ホテルの裏山に作られていて、歩いて行こうと思えば行ける距離だった。

「歩きます?」

黙々と30分くらい歩いて目的地に着いた。

スキー道具一式借りて、準備万端。

「この天気じゃ、遊べても30分が、限度だよ」

スキー場のおじさんに言われた。

「晴れてますよ?」

「今はね」


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