加納欄の研修旅行 シリーズ7
「道を見失った」

「え?!」

よく、聞こえなかった。

「スキー場から、外れてる!危険だ!」


外れてる?


「だって、スキー場を歩いてたじゃないですか!」

「これだけ視界が悪けりゃ、どこにいるのかわからなくなって当たり前だ!」

「高遠先輩のケータイ使えます?」

高遠先輩は、ポケットからケータイを取り出したが、すぐにしまった。

「どおでした?」

「ダメだ!」


やっぱり(-.-)


さっき、こっそり自分のケータイを確認したら、圏外になっていたのだ。

ホテルは何ともなかったから、歩いているうちに、電波が届かない場所にきてしまったのかもしれない。

時間にして正確ではないが、30分は歩いた気がする。


迷いこんだかな。


何かないかな。


下手すれば凍死だよ。


あたしは、辺りに目を凝らした。

吹雪いている前方に、黒い三角が見えた。


何かある!


「高遠先輩!あっち!!」

あたしは、高遠先輩の腕を引っ張り、三角が見えた方を指差す。

高遠先輩も目を凝らした。

「建物だ!行くぞ!」

と言って三角に向かって歩きだした。

何とか時間がかかりながら三角に到着した。

三角は、屋根だった。

木造の小さな小屋だった。

「入れないです!鍵がっ!」

「ここで野宿したいか?」

「ジョーダン!」

「じゃ、ヨロシク」

高遠先輩は、あたしに、ドアを壊せと言っているのだ。


ベニヤ板っぽいから、壊すことはできるけど。


「……怒られません?」

「そ~か、お前は死にたいのか」

あたしは、1秒後には、ドアを蹴破っていた。

引き戸だったドアを蹴破ったため、ドアは、レールから外れ破壊された。

とりあえず、中にはいった。

真っ暗だった。

何か物が置いてあるのはわかった。

高遠先輩が、ライターを出し、火を灯した。

ライターの灯りがとても温かく感じた。

「火はアブねぇな」

辺りを見回した高遠先輩が言った。

「なんでです?」

「灯油置き場だ」


< 15 / 22 >

この作品をシェア

pagetop