加納欄の研修旅行 シリーズ7
「灯油?」

「あぁ」

「火、使えないんですか?」

「当たり前のこと言うな」

「……いっそのこと、燃やしちゃいません?温かいですよ?」

「バカなこと言うな」


わかってますよ。


「吹雪が止めばなんとかなる。それまでは、ここにいるしかないな」

壊されたドアから雪が入ってきた。

「とりあえず、雪よけて座るか」

そう言って、高遠先輩は、雪がこない壁にもたれかかった。

あたしも、高遠先輩の隣に座った。

「止みますかねぇ」

「さぁな。たいして滑ってねぇのに、吹雪きやがって。何か怨みでもあんのかよ」

「……怨みじゃないですよ。呪いですよ。呪い」

「呪い?」

「大山先輩ですよ」

「仁?」

「大山先輩が呪いかけたじゃないですか。アレですよ。アレ、すっごい効力があるって、言ってましたもん。さっき歩いてる時も聞こえましたよ!」

「呪い?あぁ、あの時のか、くだらないこと覚えてるな」

「くだらない?くだらなくなんてないですよ!そのせいで全てのイベントが出来てないんですから!」

「帰ったら、仁に言えよ」

「嫌です」

「なんだよ、ソレ」

高遠先輩が、笑った。

「ハァァァ。寒ぅ」

建物の中に入ったとはいえ、寒さはあった。

あたしがドア壊したんだから、仕方ないか。

「反対側に座れ」

「すいません」

あたしは、高遠先輩の反対側に座り直した。

壊れたドアから、すごい風が入ってきた。

風向きが変わったのかも。

あたしは、ブルルッと震えた。

すると突然、高遠先輩が、あたしを引き寄せた。

「先輩……」

「一人で震えてるより、くっついてたほうが、まだ温かいだろ?」

そう言って高遠先輩は、わざとギュッと抱き締めた。

「安心しろ、欄の胸がどんなにデカクテも、感じねぇから」

「た!せ!高遠先輩!お風呂の話し、どこまで聞いてたんですかっ!」

露天風呂で胸の話しをしてたのを、高遠先輩に聞かれていたらしい。

そう言えば、高遠先輩のことをカッコイイと、話してたことも聞いてたみたいだし。

「お前らが勝手に話してたのが聞こえてきただけだ」


< 16 / 22 >

この作品をシェア

pagetop