加納欄の研修旅行 シリーズ7
「後は、何にも聞いてないですよね」

「お前、逃げて風呂から出てったじゃねえか」

「だって!」

「あるようには見えないけどな」

高遠先輩は、あたしの胸をマジマジと見た。

「なっ!何見てんですか(>_<)」

「でも、そうでもないか、あの時は……」

高遠先輩は、ゴホンと、咳払いをした。

「あの時?」


いつ見せた?


いつ見られた?


「高遠先輩?」

「なんでもない」


き、気になるし。


「高遠先輩!あの時って!?」

「……お前が、あの野郎に犯されそうになった時だよ、しょうがねぇだろ?」

そう言って、高遠先輩は、目線を外した。

そういえば、前に、危ないところを高遠先輩に、助けてもらった。

その時のことだ。


嫌なこと思い出した。


「…………」

「……すみません」

「なに謝ってるんだ。タコ」

「…………」

「……悪かったな。嫌なこと思い出させて」

あたしは、ただ首を横にふった。

「寒いな」

そう言って、高遠先輩は、またあたしを抱き締めた。

無言の時間がつづいた。

「欄、起きてるか?」

「はい。でも、眠くなってきました」

「バカ、寝るなよ」

「ムリです」

「寝たら死ぬぞ」

「死なないですよぉ。テレビとか本とかでも、よくやってるじゃ、ないですかぁ、だいたい、ピンチになっても、生きてるじゃ、ないですか」

「テレビって、アレは作りもんだろうが、俺達は、生身の人間なんだぞ」

「でも…………眠……い」

「寝るなって、欄」

「……そぅ、いえば、よく、寒いからって……男と、女の人が……遭、難する、と、身体を温め合い、ますよ……ね」

「するか?」

「いいですよぉ」

「オイ」

「冗談ですよ」

真顔で即答した。

「お前なぁ、ドキッとさせんなよ」

「え?」


なんで、高遠先輩が、ドキッとするの?


あたしまで、ドキドキしてきちゃうじゃないですか。


眠気覚ましの話しに、高遠先輩が、動揺したら、あたしまでドキドキしてきた。

さっきまで、抱き締められても、大丈夫だったのに。


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