加納欄の研修旅行 シリーズ7
あたしは、建物の中を散歩していた。

「あなたも刑事なんですか?」

突然、声を掛けられた。

40代くらいのオジサンだった。

「そうですけど?」

「I署刑事科の永森です。まさか、10代、ではないですよね?」

確かに童顔だから、若くは見られるけど、10代に見られたことはなかった。

「違います」

「東京の警察は人材が不足なら、誰彼構わず人を雇うのかと思って」


何よ、それ!


「私みたいな田舎者には、何の体力も実力も無さそうな者が刑事をやってるということが、気に入らないんですよ」


実力がない?


「実力……」

「あの、高遠って奴の世話係なんだろ?女なんて、言われた事の10/1も出来ないくせに」

「それは、経験からですか?想像で言ってるんですか?」

「私の署に、女刑事はいない。女はお茶だけを入れてればいいんだ」

そう言って、永森刑事は、歩いて行ってしまった。


なによ!


何なのよ!!


ムカつくぅ~。


あたしは、壁に1発蹴りを入れた。

木造だったら、穴があいていた。

「物を壊すな」

高遠先輩が来た。

「誰です?!あいつ!!女は、お茶くみだけでいい。なんて!」

「知らん」

「ムカつくぅ」

「……午後の講義は、お前がやるか?」

「え?」

「男女合同でやってくれれば、オレは昼寝ができるけど」

「任せて下さい(>_<)」

そして、午後の講義が始まった。

「加納欄です。よろしくお願いします。午後は、男女別の予定でしたが、これからの女性刑事の活躍が期待されるので、男女一緒にやることにしました」

ざわざわとなった。

「何か、質問でも?なければ、実習に入りますけど」

男が、手を挙げた。

「では、質問します。I署の永森です。先程は失礼しました。加納刑事は体格も身長差もある犯人を、本当に女性1人で逮捕できると思ってるんですか?」

研修に来ていた女性刑事達の何人かの顔が一瞬ムッとした顔になった。


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