加納欄の研修旅行 シリーズ7
「今のは、柔道じゃないっ!午後の講義は、柔道のはずだ!」

と、怒鳴った。

「そうでしたね。ごめんなさい。今のは、確かに柔道ではないですね」

あたしは、謝った。

喜んでいた女性刑事達も、永森刑事の言葉に静かになった。

「突然襲われたら、自分の身を守るのは柔道だろうとなかろうと、関係ないんじゃないのか?」

高遠先輩が声をかけてきた。

「あ、でも確かに今は柔道を使って教えないといけない時間ですし、私の見本の見せ方が間違えてました。永森刑事も、あんなに真剣に演技してくれたのに」

永森刑事は、無言で自分の立ち位置に戻った。

「すみません。今のは確かに柔道ではありません。先程、高遠先輩が言ったように、私は、とっさの判断でああやって犯人を倒しました。最初に話した通り、冷静な判断が次の一手を決めます。犯人を逮捕できるなら、どんな武術でも構わないと思っています。でも、今は永森刑事が言うように、柔道を教える時間なので、今からは柔道を教えさせていただきます。よろしくお願いします」

あたしは、お辞儀をして、高遠先輩を見た。

高遠先輩は、また寝ていた。

「女性と男性で1対1になっていただいて、余ってる男性は男性同士でお願いします。女性刑事は、相手を犯人だと思って取り組んで下さい。あ、掴む場所をもう少し奥にすると投げやすくなりますよ」

あたしは、組手を始めたところから、順番に見て周った。

何人かの女性刑事が、男性刑事を投げ飛ばしていた。

「加納刑事、教えて下さい」

身長差のある相手に苦戦してる女性刑事が、助けを求めてきた。

「犯人を逮捕したいなら、柔道だけじゃなくていいんじゃないですか?」

その意味を理解したその女性刑事は、柔道以外の方法でまた取り組みにかかった。

永森刑事のところへ来た。

あんまり会いたくないけど。

「加納刑事」

通り過ぎようとしたら、永森刑事に呼び止められた。

「なんでしょう?あ、体大丈夫ですか?」

「大丈夫です。そんなに弱くないですよ」


そうですか(-.-)


「先程のことですが、なぜ蹴りを入れたのですか?」


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