【短編集】シロクロ。
耳鳴り。
聞こえてるよ?
あなたの優しい声。
ずっと、響いてるよ。
『耳鳴り。』
朝、あなたの声がした気がして、慌てて起き上がった。
でも、あなたはいなくて。
いつもと変わらない部屋。
「なに、期待してるんだろ・・。頭、痛いし。」
勢いをつけて起き上がったから、少し、頭がくらくらする。
・・。
・・・。
もう、何度繰り返したっけ?
帰り道、何度も響く声に、振り向いた。
誰もいない景色、広がってる。
「いないって、わかってて、振り向くとかね?」
自分が少し、バカみたいだよ。
あなたがいない。
それが、真実。
だけど。
耳の奥。
鳴り続ける声。
私の世界を、蝕んでいく。
永遠に消えない耳鳴りが。