【短編集】シロクロ。
なくした時間。
いまさら・・。
もう、遅すぎる。
『なくした時間。』
声が聞きたくて、顔が見たくて、泣いてしまった。
だって、届かない願いだ。
こんなにも、距離があるのに。
どうやったら、この思い、忘れられる?
愛してるなんて、もう、辛いだけなのに・・。
部屋中に溢れる思い出に、目を背けるように、ドアを開けた。
あの日と同じ春の匂いに、泣きそうになる。
(行ってきます。)
心の中だけで言い、ドアを閉めた。
―ねぇ?夢をずっと見るには、どうすればいいのかな?
眠り続ける事ができたら、夢をずっとみていられるのかな?―
そのときは、笑えたセリフ。
くだらないと、笑えば、すねたように頬を膨らませる。
―けっこう、本気なんだけどなぁ。
だって、夢の中だったら、ずっと一緒にいられるのに・・。―
忙しい仕事。
会えない時間。
寂しがりやには、辛かったのかな?
今なら、たくさん会えるのに・・。