粉雪
「…何ソレ?
勝手に変な名前、付けないでくれる?」


口元を引き攣らせ、ため息をついた。


馴れ馴れしすぎて、嫌になってくる。



『何で?可愛いじゃん♪
俺は“隼人”でいいから!』



…聞いてねーよ。


完璧に、ペースを乱される。


“隼人”と名乗った男の言葉に、自分でも分かるほど、口元が引き攣っていた。






『…てゆーか、この雨の中、何やってたの?』


「家に帰ってたんだよ。」


『傘は?』


「あったら濡れてない。」


『あははっ!そりゃそーだ!(笑)』



どんな些細なことでも、自分のことを聞かれるのは苦手だ。


第一、こんな馴れ合いがしたいんじゃない。




『つーか、高校生がこんな夜中に何やってたの?』


「…バイト。」


『そっか、ご苦労さん。』


隼人は最後の煙を吐き出しながら、煙草を灰皿に押し当てた。



『あっ!そうだ!
お前、携帯教えとけよ!』


「…何で?」


『雨降って、また傘持ってなかったら、それこそ風邪引くだろ?
電話してくれれば、迎えに行ってやるから!』



この男は、馬鹿か?



「…アンタ、あたしのアッシー志願者?」



本気でそんな風に思えてくる。



『あははっ!何でそーなるかなぁ?
“優しさ”とか思えない?』


今度はお腹を抱えて笑われた。


この男は、一体何がしたいんだろう。



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