粉雪
―ガチャ…

「―――ッ!」


夜中の3時を過ぎた頃、ドアを開ける音が聞こえ、緊張が走った。



「隼人!!
どこ行ってたの…?」


『―――ッ!』


急いで隼人の元に駆け寄ると、お酒の臭さに吐きそうになった。


うな垂れるように、隼人は壁を頼りに歩く。


こんな隼人、見たことがない。


支える体は重くて。



『…ちーちゃん、ごめんな…。
ホントに…ごめん…。』


「―――ッ!」


一瞬、何が起こったのか分からなかった。


ただ気付いたら、隼人に抱き締められていた。


あたしの肩に顔をうずめ、その表情はわからない。



「…隼人…」


だけど、わずかな期待に胸が膨らんだ。


そして、ゆっくりと顔を上げた。



『…子供、堕ろして…?
何もなかったことにして、ずっと傍に居て…。』


「―――ッ!」


だけどそんな期待は、一瞬のうちに崩れ去った。


言われた言葉の意味なんて、何一つ理解出来なくて。


だけど隼人は、吐き出すように搾り出す。



『…ごめん、俺が全部悪いから…。
捨てられたくないのは、俺の方なんだよ…!』


抱きしめる腕に力が込められ、同時にあたしの胸も締め付けた。


ただ、隼人の手が震えてる気がして…。


こんな隼人は、やっぱり見たことがなくて。



「…隼人…!」


瞬間、壁に押し当てられ、唇を塞がれた。


お酒の匂いに吐きそうで、

だけど隼人が何を考えているのかなんて、まるでわからなくて。


あたしの体を這う舌が怖かった。



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