粉雪
『…ちーちゃん、ちょっと良い?』


「…何?」


行為が終わり、隼人は煙草を吹かしながら険しい顔を見せた。


何故かその顔に、嫌な胸騒ぎばかりを覚える。


そんなあたしに、隼人はゆっくりと聞いてきた。



『…ちーちゃんのお母さん、今どこに居る?』


「―――ッ!」


瞬間、耳を疑った。


まさか今更、聞くこともないと思っていた人のこと。


何で隼人が突然、こんなことを聞いてくるのかがわからない。



「…知らない…。
でも、何で?」


目線を泳がせるあたしに、隼人は目を伏せるようにして一枚の紙切れを取り出した。


そして、ゆっくりと口を開く。



『…これって、お母さんだよね?』


手渡されたものを見て、言葉を失った。



「…借用書じゃん…!」


そこには、母親の名前の書かれた借用書があった。


額面は、1000万。


その瞬間、あたしの頭は真っ白になる。


どーゆーことなのか、まるでわからない。


そんなあたしに、隼人は更に言葉を続ける。



『ココ、見て?』


「―――ッ!」


ゆっくりと目線を移した場所に、また言葉を失った。



「…連帯保証人が、あたし…?!」


隼人の指差す場所には、母親の字で、あたしの名前が記されていた。


あたしには、今起こっていることがまるで理解出来ない。



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