粉雪
『…やっぱ、ちーちゃん知らなかった?』


「…意味わかんないんだけど…。
これってどーゆーこと?」



あたしの知らないところで、一体何が起こってるの?


戸惑うあたしを横目に、隼人は煙草を咥え、その煙を吸い込む。


そして細めた目で吐き出しながら、ゆっくりと言葉を見つけ出した。



『元々の元金は100万。
だから、ここに書いてある金額は、書き直された物だ。』


「―――ッ!」



“書き直された”ってことは、普通の金融屋じゃない。



「…お母さんが…借金?!」


目を見開くあたしに、隼人は言葉を続ける。



『これは、債権回収不可能になった借用書で、闇で流れてた。
ちーちゃんの名前見つけて、慌てて俺が拾ったんだよ。』


「…そんな…!」


まだひどく混乱する頭は、ちゃんと働いてくれなかった。


だけど隼人は、そんなあたしの瞳を真剣に捕らえ、そして聞く。




『どーすればいい?』


「…どーゆーこと?」


『今ココで、破り捨てても良いよ。
でも、ちーちゃんが良いなら、俺はお母さんを見つけ出して追い込む。
どーしたいかは、ちーちゃんに任せるから。』


しっかりとあたしを見据える隼人の目に、迷いはなかった。


追い込まれた人間がどうなるかくらい、あたしだってわかってる。


だけどあたしはもぉ、“隼人の女”だから。


“母親”なんて、いらないんだ。



「…お母さん、いなくなってるよ…?」


『―――ッ!』


少し迷ったが、口を開いた。




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