粉雪
「…じゃあ、お母さん騙されてるの?!」


『…さあね。
それは、俺にもわかんない。』


声を上げるあたしに、隼人はため息をついた。



『ホントに金が必要になっただけかもしれないし。
工藤がお母さんに本気なのかは、わかんない話だよ…。』


そして振り払うように、険しい顔に変わった。


その瞬間、あたしは目を逸らす。


『…まぁ、その辺はどーでも良いよ。
借金があるって事実だけで。
そしてそれを、ちーちゃんに被せた。』


「―――ッ!」


突き付けられた現実は、酷く悲しいものだった。


だけどあたしは、泣きたくなんてない。


あんな人の為に、これ以上傷つきたくはないんだ。



「…ははっ、最低な親だね…。」


乾いた笑いは、だけどやっぱりあたしの胸を締め付けて。


あたしは捨てられた上に、借金まで被せられたんだ。


そして母親は、どこかに逃げてしまった。



『もぉ寝ろよ。
明日も仕事あるんだろ?』


「でも―――」


だけど隼人は、遮るように言葉を続ける。



『良いから!
ここからはもぉ、ちーちゃんには関係のない話だから。
あとは、俺がやる…!』


「―――ッ!」


何をするかなんて、わからなかった。


だけどあたしはもぉ、母親を捨てたんだ。


捨てられたんじゃない。



「…わかった、おやすみ。」



隼人の目つきが変わっていたから、それ以上は何も言えなかった。



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